心臓カテーテル治療PCI

心臓カテーテル治療(PCI)

狭心症や急性心筋梗塞など、冠動脈(心臓の筋肉に血液を運ぶ血管)が狭窄または閉塞している患者さんに対して、風船やステントを用いて狭くなった冠動脈を広げる治療です。当院は経皮的高速回転アテレクトミー(通称ロータブレーター)の認定施設であり、高度石灰化病変に対する治療を行っております。また左冠動脈主幹部や慢性完全閉塞性病変といった複雑病変に対しても積極的に治療を行っており、良好な治療成績が得られています。

狭心症とは

冠動脈が何らかの原因で狭くなり、心筋への血流の流れが悪くなり一時的に心筋が酸素不足になる病気です。主な原因として、動脈硬化があります。また、何らかの刺激によって冠動脈が痙攣し細くなり(SPASM)、血液の流れが悪くなる事があります。虚血が一過性であれば心筋の障害は可逆性で、血流が回復すれば障害は回復します。

急性心筋梗塞とは

動脈硬化等で狭くなった冠動脈が、さらに狭くなり閉塞してしまい、その先の血液の流れが途絶え心筋の細胞が死んでしまう(梗塞)病気です。
▼考えられる要因
①狭心症から心筋梗塞に進行する場合
②いきなり心筋梗塞が起こる場合(血栓が飛んできた、など)
→いずれも生命の危険が伴うため、早期発見・早期治療が重要になります。
<経皮的冠動脈形成術>(PCI; percutaneous coronary intervention)
<右冠動脈の慢性完全閉塞病変に対する心臓カテーテル治療>

ロータブレーター(Rotational Coronary Atherectomy)

当院はロータブレーターの認定施設です。ロータブレーター(図1)は先端にダイヤモンドをちりばめた高速回転ドリルで、石灰化を伴う動脈硬化の強い冠動脈狭窄病変を削る治療です(図2)。ロータブレーターは先端に人工のダイヤモンドで作られたドリルを備えていて、1分間に14-23万回の回転を行い、石灰化病変を削ることができます。通常の心臓カテーテル治療において、約5-10%程度はロータブレーターが必要な症例が含まれますので、心臓カテーテル治療において非常に重要な医療機器です。
図1)図1 ロータブレーター 図2)ロータブレーターによる治療

ダイアモンドバック システム

従来のロータブレーターに加えて、新たに使用可能となった冠動脈高度石灰化病変に対する治療デバイスです。先端から約6.5mmのところに、中心から偏心的に装着されているクラウン(ダイヤモンドコーティングされている)が高速回転すると遠心力で軌道回転し、石灰化病変を大きく削ることができます。サイズ1.25mmの細いサイズのみになるため、橈骨動脈(手首)からのアプローチが可能であり、低侵襲治療を可能にします。
ロータブレ-ターとダイヤモンドバックを使用することにより、治療選択の幅が広がり、効果的な治療ができるようになります。

冠動脈の石灰化プラークをダイヤモンドバックで削る

ショックウェーブ(Shockwave)

Shockwave IVL(Intravascular Lithotripsy:血管内砕石術)とは、PCI実施時に高度石灰化病変に対して行われる治療の1つです。
音圧波パルスにより血管壁の内側にある内膜及び中膜の石灰化病変を選択的に砕きます。

PCIを実施する際に石灰化病変はステントの拡張不良による再狭窄やステント血栓症などのリスクを増大させますが、IVLは石灰化病変をバルーンによる拡張とバルーンカテーテルに内蔵されるエミッターから発する音圧波パルスにより破砕・修正し、ステントやDCB(Drug Coated Balloon)の拡張を補助します。

(A)IVLバルーンカテーテルを石灰化病変に配置し、バルーンを拡張します。
(B)エミッターからの放電により音圧波を発生させます。
(C)血管壁の内側にある内膜及び中膜の石灰化病変を選択的に砕きます。
(D)石灰化病変を破砕後、内腔拡大のため一体型のバルーンを低圧で使用し狭窄部変を拡張します。
参考文献・引用)Kereiakes, D.J, Virmani R. Hokama JY., et al. Principles of Intravascular Lithotripsy for Calcific Plaque Modification
J Am Coll Cardiol Intv. 2021 Jun, 14 (12) 1275–1292
https://www.jacc.org/doi/abs/10.1016/j.jcin.2021.03.036
Shockwave Medical.Shockwave Medical Japan ホームページ.https://shockwavemedical.co.jp/ ,2023/9/5閲覧

冠血流予備量比(Fractional Flow Reserve; FFR)

冠動脈内に狭窄病変がある場合に、狭窄病変によってどの程度血流が阻害されているかを調べる検査です。
当科ではこのFFRを用いて経皮的冠動脈形成術の適応を判断しています。

光干渉断層法(Optical Coherence tomography; OCT)

光干渉断層法は近赤外線を用いて約10μmといった、非常に微細な冠動脈内の情報を得る事が出来ます。更には3D画像構築を行う事で冠動脈病変の詳細な病態を把握し、質の高いステント治療を行う事が可能です。

血管内超音波法(Intravascular Ultrasound; IVUS)

超音波を用いて冠動脈の動脈硬化の性状や血管の大きさを測定し、適切なステント治療のために役立てています。

補助循環用ポンプカテーテル・経皮的補助人工心臓(IMPELLA)

アンローディングImpellaを用いた循環補助時には、全身血液循環の改善とともに、心室から直接脱血することで左心室の負荷が軽減されることが期待される。容積と圧力(左室拡張末期容積[LVEDV]および左室拡張末期圧[LVEDP]として測定)の双方が減少し、最大冠血流量が増加する。
これらの変化によって、心筋の酸素需給バランスが改善される。全体として、Impellaを用いることによって得られる上記の生理学的なベネフィットは、自己心機能を回復するのに最適な条件をもたらすと考えられる。 左心室の負荷を直接軽減するというImpellaの作用は、機械的循環補助デバイスの中でも独特なものである。

末梢臓器灌流末梢臓器は絶えず血液の供給を受けており、ガス交換や栄養の補給、不要物の排出などにより恒常性を維持している。そのため、末梢臓器灌流を維持することは、不可逆的な臓器障害と臓器不全の予防となる。Impellaを用いることで、大動脈圧(AOP Aortic Pressure)、平均動脈圧 MAP Mean Arterial Pressure)、 Cardiac Power Output CPO)が上昇する。これらの変化により、末梢臓器灌流の改善が可能となる。

画像・動画提供:日本アビオメッド

大動脈バルーンパンピング(Intra-Aortic Balloon Pumping; IABP)

足の付け根より胸部―腹部大動脈内にバルーンカテーテルを留置し、心臓の拍動に同期して30~40mlのバルーンを拡張、収縮させる事で心臓の圧補助を行う補助循環装置です。循環動態が悪く、複雑な冠動脈病変の治療の際に使用します。

経皮的心肺補助装置(Percutaneous Cardio-Pulmonary Support; PCPS)

心臓がポンプとして十分機能しなくなった場合に緊急で用いる心臓補助装置(人工心肺システム)です。とくに心原性ショック、難治性心室頻拍・心室細動、重症肺塞栓症、劇症型心筋炎といった非常に重篤な病態において有用です。当院でも心停止で搬送された急性心筋梗塞患者さんの救命に劇的な効果をあげています。

柏厚生総合病院 循環器内科

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