不整脈とは生理的反応以外の様々な原因によって心臓の刺激伝導系(伝導回路)に障害が生じたために起こった脈拍が不整になったことをいいます。
脈拍が速くなる不整脈を「頻脈性不整脈」、脈拍が遅くなる不整脈を「徐脈性不整脈」といいます。生命に危険を及ぼす重篤な不整脈から、全く影響がないため治療は不要で経過観察か可能な不整脈まで、様々な不整脈があります。
その中で、近年最も多くみられる治療が必要な不整脈が、心房細動です。心房細動とは、本来は一定のリズムの電気活動で動く心房が、無秩序に電気活動をしてけいれんしている状態を指します。そのため規則的な脈ではなく、不規則な脈となってしまいます。心房細動を発症すると、動悸やめまいなどの症状を自覚することがあります。又心房細動を発症すると脳梗塞を引き起こす危険性が高くなります。心房細動の治療では、不規則な脈をコントロールするという点以上に、脳梗塞発症を予防するという点が重要になります。また、似たような病気として、心房粗動も知られていますが、発生のメカニズムに異なる点があります。心房細動は、脳梗塞などの血栓塞栓症・心臓弁膜症や心機能低下による心不全・腎臓や脳の血流低下による機能低下(慢性腎臓病,認知機能の低下)などを合併し、日常生活の活動に大きな障害をもたらす可能性が高いため、適切な治療を適切な時期に受けられることが必要です。
不整脈の治療は、大きく分けて「薬物治療」(抗不整脈薬の内服など)と「非薬物治療」(カテーテル治療、ペースメーカ等のデバイス治療)の2つの治療方法があります。個々の患者様に対してどの治療方法が望ましいのかは、定められたガイドラインに従って決定します。
頻脈性不整脈に対しては、カテーテルアブレーション治療(経皮的カテーテル心筋焼灼術)が行われるようになっています。カテーテルアブレーション治療の対象となる主な頻脈性不整脈は、「発作性上室性頻拍」・「心房頻拍」・「心房細動」・「心房粗動」・「心房期外収縮」・「心室期外収縮」および「心室頻拍」です。それぞれの不整脈の原因となっている心臓内の箇所に、血管から心臓に進めた専用のカテーテルの先端から高周波電流を流して、心臓の心筋細胞を壊死させることによって不整脈を治療します。
カテーテルアブレーション治療は、基本的には根治治療です。カテーテル治療を行うことによって、動悸や胸の不快感といった症状が消失するだけでなく、心臓への悪影響が回避できるため心臓の状態が改善することが期待できます。それにより、日常生活を不安や制限なく送っていただくことも期待できます。
当院でも2020年度から不整脈に対する診察と治療を積極的に行わせていただいています。当院では、頻脈性不整脈に対しては従来どおりの薬物治療だけでなく、3次元ナビゲーションシステムを用いた高周波電流によるカテーテルアブレーション治療(経皮的カテーテル心筋焼灼術)を、静脈点滴での全身麻酔下で行わせていただくことが可能です。鎮静下で行うため、患者様は痛みや辛さを感じることなく、治療を受けていただくことができます。
いずれの不整脈に対しても、まず全身状態や基礎心疾患の有無などを評価したうえで、適切な治療内容を提示させていただき、治療をすすめてまいります。症状に不安がある、又は症状はないが健診などで不整脈を指摘された患者様は、是非当院外来を受診していただき、外来担当医に一度ご相談ください。