肺高血圧症Pulmonary Hypertension

肺高血圧症 Pulmonary Hypertension

概要outline

肺高血圧症(PH)とは、肺の血管抵抗が増大して肺動脈圧が上昇する状態です。通常、肺動脈の平均圧は安静時で20 mmHg以下ですが、安静時平均25 mmHg超(労作時30 mmHg超)の場合にPHと診断されます。原因により一次性(特発性/遺伝性)肺動脈性肺高血圧症、左心疾患に伴うもの、肺疾患や低酸素血症に伴うもの、慢性血栓塞栓性のものなどに分類されます。希少疾患ながら進行すると右心不全に至る重篤な病態です。

症状symptom

肺血管が狭く硬くなると心臓から肺への血液送り出しが阻害され、心拍出量低下を招きます。その結果、運動時の息切れや極度の疲労感、動悸などが初期症状として現れます。進行すると右心系に過度の負荷がかかり、頸静脈怒張、肝腫大、下肢浮腫など右心不全の徴候が出ます。また失神発作やチアノーゼを呈することもあります。特発性肺高血圧症では若年女性に多く、症状が徐々に進行する傾向があります。

診断diagnosis

心エコー検査で推定肺動脈収縮期圧の上昇や右室拡大を捉えスクリーニングとします。確定診断には右心カテーテル検査で平均肺動脈圧や肺血管抵抗を直接測定します。原因検索のため肺機能検査、肺CT、V/Qスキャン(慢性血栓塞栓症の評価)、コネクティブ組織病疑いでは自己抗体検査などを行います。心不全や弁膜症による肺高血圧症では基礎疾患の診断治療が優先されます。

治療treatment

原因に応じて治療戦略が異なります。左心疾患や肺疾患に伴うPHでは、それら原疾患の治療や酸素療法が中心です。一方、肺動脈性肺高血圧症(PAH)では近年各種の肺高血圧症治療薬が登場し、予後が飛躍的に改善しました。具体的には、肺血管拡張とリモデリング抑制を目的にプロスタサイクリン製剤(エポプロステノール持続点滴やベラプロスト経口薬)、エンドセリン受容体拮抗薬(ボセンタンなど)、ホスホジエステラーゼ5阻害薬(シルデナフィル)等を組み合わせます。これらの薬物療法で3年生存率は80%以上に向上しています。慢性血栓塞栓性肺高血圧症(CTEPH)では可及的に肺動脈血栓内膜摘除術(PEA)による外科治療や、近年ではバルーン肺動脈拡張術(BPA)などカテーテル治療も行われます。重症例や薬剤抵抗性例では心肺移植も検討されます。早期発見・治療が重要であり、専門医療機関での継続管理が推奨されます。

柏厚生総合病院 循環器内科

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